アフリカ世界遺産 - ナイジェリア
オシュン=オショグボの聖なる木立
長年生育してきた木には不思議な力が宿るという話は、日本でも御神木とされ大切にされる樹木があるように信じられてきました。

~宗教的に大切にされてきたナイジェリアの原生林~
ナイジェリアの南西部、オシュン州の州都オショグボにあるオシュン=オショグボの聖なる木立も、そのように大切にされてきた原生林です。 まず1965年に国内で史跡に指定され、2005年には75ヘクタールが世界遺産に登録されました。
この原生林が大切にされてきた事は、現在でもナイジェリアの人口の多数を占めるヨルバ人が信仰する宗教に由来します。
ヨルバ人の神話では豊穣の女神オシュンが川に姿を変えたとされ、川沿いの原生林に女神が住んでいると信じてきました。 そこで原生林を祀る事により、人々は幸福になれるとした訳です。
ナイジェリアは1472年にポルトガル人がラゴスを建設して奴隷貿易の拠点としてから、植民地化が徐々に進んで行きました。完全に独立を果たしたのは1960年です。
この間にオシュンに対する信仰が徐々に失われて行きました。 植民地支配の間にキリスト教、イスラム教が広く浸透していったからです。
信仰が復活したのは、ヨルバ人ではなくオーストリア人の女性芸術家ズザンネ・ヴェンガーの活動がきっかけです。 当時行われていた樹木の伐採、遺跡の盗掘、狩猟などを禁じ、森林を保護する活動を始めました。 彼女の活動を受けて協力した地元の芸術家たちにより、20世紀後半に信仰が再興されました。
現在でも40ほどの社がオシュン=オショグボの聖なる木立に存在しています。
20世紀に造られた彫刻も点在しています。 ナイジェリアの世界遺産登録では文化遺産となっています。
世界遺産は最近建造された社もあるわけですが、様々な動植物が生息する原生林と社が一体化している事が、文化的に高い価値があると評価されたようです。 原生林自体も、400種類以上の植物が生息しており、そのうちの200種類以上が薬草として知られているものなのです。
現在、この世界遺産となる原生林では毎月どころか毎日宗教的な儀式が執り行われています。 女神と人々が取り交わす約束を復興し、毎年7月から8月にかけて12日間の祭典が開催されています。
現在では狩猟、伐採などが禁止され、崇拝の対象としての存在を取り戻しています。 古代からの信仰と環境保全活動が入り交じった神聖な原生林なのです。
オショグボは400年ほど前に建設が始まった都市で、現在は約200万人が住んでいます。 大都市の中に手つかずの原生林が残っているのは奇跡的ともいえます。