中東諸国世界遺産 - サウジアラビア
アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)
「アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)」はサウジアラビアの北西部、砂漠の中に位置する古代遺跡で、現在サウジアラビア唯一の世界遺産です。アル=ヒジュルは「岩だらけの場所」を、別名のマダイン・サーレハは「サーリフの町」を意味しています。2008年にユネスコの世界遺産に登録されました。

「アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)」には、紀元前1世紀~紀元1世紀に作られた建造物が残されています。当時この地にはナバテア人が定住しており、ヨルダンのペトラと並んでかつての“ナバテア王国”を伝える考古学的にも重要な遺跡です。ナバテア人の起源については諸説ありますが、未だ確かなことは言えないようです。
遺跡の中でとりわけよく保存されているのが、外壁に装飾が施された墓です。砂漠に点在する巨岩を掘って内部を空洞とし、入口に当たる部分は平らにした上でレリーフ彫刻で装飾されています。「アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)」では、100以上の墓が見つかっています。巧みに手を加えられた外装とは対照的に、内部は質素な作りのものが多いです。とはいえ、岩山をくりぬいて作られた空間には一種独特の雰囲気があり、墓ということもあいまって思わず畏怖の念を覚えずにはいられません。
サウジアラビア初の世界遺産であり、多くの観光客が古代遺跡を観に訪れる「アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)」ですが、なんと現地ではいわくつきの不吉な場所として怖れられています。これは、イスラム教の聖典『コーラン』の中のあるエピソードに由来しています。
記述によると、かつてこの地に住んでいたタムード人に神アッラーがラクダを与えました。そのとき、使徒であるサーレハという人物はラクダを大切に飼うようにと言いますが、タムード人たちは彼の言葉に反してラクダを殺してしまいます。怒ったアッラーはサーレハとその従者以外のタムード人を滅ぼしたということです。熱心なムスリムであるサウジアラビアの人々にとって、「アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)」は過去にアッラーの怒りに触れて罰を受けた呪われた場所なのです。
なんだか恐ろしげな話をしてしまいましたが、「アル=ヒジュルの考古遺跡 (マダイン・サーレハ)」は古代遺跡好きにはたまらない世界遺産でしょう。サウジアラビアにわざわざ旅行しに行く人は少ないかもしれませんが、中東を訪れた際にちょいと足を伸ばしてみるのもいいかもしれません。