南アフリカ世界遺産
スタークフォンテン、スワートクランズ、クロムドライ及び周辺地域の人類化石遺跡群
1999年に世界遺産に登録された『スタークフォンテン、スワートクランズ、クロムドライ及び周辺地域の人類化石遺跡群』(以下、人類化石遺跡群)は、南アフリカの北東部に広く分布しています。全体で30か所にも及ぶ地下・表層洞窟で、人類進化史における貴重な初期人類の化石が発見されています。この事から、南アフリカは≪人類発祥の地≫などと呼ばれている所以でもあります。

何か所にも遺跡発見地がある中で、特に重要な発見をされた洞窟があります。世界遺産の名前にも入っている、『スタークフォンテン』『スワートクランズ』『クロムドライ』の3か所です。
『スタークフォンテン』は、この中で初めて猿人類の化石が発見された洞窟です。≪力のある泉≫を意味するこの場所では、1924年に大人の手の平よりも小さな10歳くらいの子供の頭蓋骨が発見されました。南の猿人の意味を持つ『アウストラロピテクス・アフリカヌス』と人類進化史で名付けられ、アフリカが人類の起源だという説が提唱されるきっかけとなる発見でした。
しかし、当時はイングランドのピルトダウン人が起源と考えられており、1953年にこの化石がねつ造だったと分かるまで無視されてきました。
この間の1947年には、成人のほぼ完全な頭蓋骨が見つかり、「ミセス・プレス」と名付けられたアウストラロピテクス・アフリカヌスにより、アフリカ起源説が確立されていきました。
このアフリカヌスは、450万年前から200万年前に生存しており、身長は120cm~140cm、脳容積はチンパンジーとほぼ同じと考えられ、前かがみで直立二足歩行が出来たと推測されています。しかし、言語能力はまだ未発達で、二足歩行するチンパンジーといった様なイメージだといいます。
現在この化石は、南アフリカ・ハウテン州にある行政府・プレトリアのトランスヴァール博物館で保存されています。
次に知られているのが『スワートクランズ』という洞窟です。『スタークフォンテン』から約1km程離れた場所に位置しています。ここでは一度、1950年に『アウストラロピテクス・ロブストゥス』が発見されたとされましたが、詳細な研究の結果、人類進化史とは外れた、途中で絶滅してしまった種の猿人類『パラントロプス・ロブストゥス』だったとされました。その後の1969年に、パラントロプスとほぼ同じ時代である180万年~140万年前に生存していたヒトに近いヒト属の一種である『ホモ・エルガステル』が発見されました。
三番目が『クロムドライ』という鍾乳洞でも有名な場所で、『スタークフォンテン』からは約2km程の場所に位置しています。ここでも、アウストラロピテクス・アフリカヌスが発見され、人類発祥の地としての信憑性を高めていったのです。
その他にも、人類化石遺跡群として2005年に追加されたのが『タウング頭骨化石遺跡』『マカパン渓谷』であり、それぞれ人類の化石が見つかっています。
『スタークフォンテン、スワートクランズ、クロムドライ及び周辺地域の人類化石遺跡群』では、今日も発掘が続けられており、人類のゆりかごとして更なる研究が進められているのです。