スイス世界遺産

ザンクト・ガレン修道院

お酒と宗教には、深い関係があります。殺菌作用があったり、酔っ払った時の酩酊が神秘的な体験を呼び起こすことから聖なるものとして崇められたり、逆に酔っ払って普段とは全く違う乱暴な行動をとりがちなことから、悪いものであるとして忌避されたりします。

キリスト教でお酒といえば、最初に思い浮かぶのは「イエスの血」として礼拝に用いられる赤ワインですが、実はビールもキリスト教と深い関係があるのです。ビールとキリスト教、その不思議なつながりが感じられるのが、スイスはザンクト・ガレン州にある、ザンクト・ガレン修道院です。

ザンクト・ガレン修道院のルーツはなんと613年にまで遡ることができ、ヨーロッパでもかなり古い修道院の一つです。現在残っている建物は18世紀半ばに建てられた重厚なバロック様式のもので、各所に壮麗な装飾が施されています。

さて、祈りの場所である修道院と、現在では堕落の象徴にように扱われるビールとの関係ですが。ビールはワインと並んで、修道院で醸造される最もポピュラーなアルコールでした。これは修道院がもともと俗世間から切り離された自給自足を目指していたということもありますが、ヨーロッパの水事情というのが深く関わってきます。日本のようにきれいな水がそこここから湧いている環境とは違い、ヨーロッパの水というのは基本的に生での飲用には適さないものでした。

ヨーロッパでビールやワインのようなアルコールの醸造が盛んだった裏には、石灰分の多い水でお腹を壊さないため、という極めて実用的な理由があったのですね。そして、その醸造の中心を担ったのが修道院でした。ザンクト・ガレン修道院では820年からビールの醸造を行なっていた記録があり、大規模なビール醸造所としては世界最古のものであるとされています。

このようにビールとつながりの深いザンクト・ガレン修道院ですが、ここに住んでいた修道士たちは何もビールを飲んだくれていたわけではありません。ザンクト・ガレン修道院は中世から近世にかけてはヨーロッパ屈指の図書館として知られており、現在でも中世を中心とした史料が多く残されています。特に9世紀に書かれたという大聖堂の設計図は、この時代の巨大建設の設計図としては極めて稀な現存する例であり一見の価値があります。

修道院に図書館が併設されているのは、印刷機がない時代、本を筆写するのは修道院の仕事だったからです。印刷機が発明されて以降も、すでに知の一大センターになっていたザンクト・ガレン修道院は、その蔵書を広めるために自前で印刷機を購入して本を作っています。

ビールと図書館、意外なつながりですが、どちらもヨーロッパ中世という歴史の中に息づいていたわけですね。そんな歴史の残るスイスの世界遺産、ザンクト・ガレン修道院でちょっと歴史の匂いを堪能したあと、街に戻ってスイスの地ビールを味わってみるのもいいかもしれません。

国でさがす
イタリア
スペイン
中国
フランス
ドイツ
メキシコ
イギリス
インド
ロシア
アメリカ
オーストラリア
ブラジル
ギリシャ
日本
カナダ
スウェーデン
イラン
ポルトガル
ポーランド
チェコ
ベルギー
トルコ
オーストリア
ペルー
スイス
韓国
オランダ
ブルガリア
エチオピア
キューバ
アルゼンチン
クロアチア
ノルウェー
フィンランド
ルーマニア
ハンガリー
チュニジア
南アフリカ
モロッコ
スリランカ
アルジェリア
エジプト
タンザニア
インドネシア
ベトナム
コロンビア
オセアニア
南米
中米
西・中央アジア
東南アジア
中東諸国
アフリカ
旧ユーゴ
バルト三国
旧ソ連地域
中央ヨーロッパ
北欧
知られざる小国