ドイツ世界遺産
シュパイヤー大聖堂
ドイツ南西部にある都市シュパイヤー。ライン川沿いにたたずむこの町は、中世に交易都市として発展しました。当時の皇帝コンラート2世は、自身の棺を埋葬する場所としてこの大聖堂を1030年からおよそ30年かけて建造しました。皇帝の権威の象徴として4本の塔を持ったシュパイヤー大聖堂には、のちに7人の神聖ローマ皇帝、ドイツ王やその妻たち、そしてたくさんの僧侶たちが埋葬されました。

コンラート2世は歴代の皇帝たちがこの聖堂に眠ることで、大聖堂の権威を近隣諸国に知らしめようとしていました。しかし、その願いも空しく、シュパイヤー大聖堂は主にフランスからの侵略を受け、破壊される歴史を繰り返します。
1689年にルイ14世によって焼かれ本来の姿を失います。18世紀には、修復され前庭などが加えられましたが、1794年に再びフランス軍によって破壊されました。19世紀には再び大規模な修復が行われました。王たちの墓石も修復の歴史とともに正確な場所が長い間わからなくなっていましたが、1900年に大規模な発掘作業が行われ、王の服飾品などとともに発見されました。現在では、王たちの墓石は地下聖堂で一般公開され、服飾品などは、大聖堂近くのプファルツ歴史博物館に収められています。別名「カイザードーム」とも呼ばれるこの大聖堂は、ロマネスク様式最大の聖堂として1981年にユネスコ世界遺産に登録されました。
この聖堂の面白いところの一つは、平面図を見ると聖堂の形が十字架になっているところです。4本の塔が左右対称に配置され、祈りの場所としてふさわしい形を作っています。外壁は特徴のある赤い砂岩でできており、その大きさはドイツの大聖堂の中でも有数のものであるといわています。内部には派手な装飾などはありませんが、正面門から続く紅白の石のアーチと柱が印象的で美しいです。皇帝大聖堂と呼ばれるのにふさわしい内装がところどころに見られます。内陣につるされた大王冠もその一つで、まるで歴代皇帝の魂がいまだにそこに漂い、人々を眺めているような幻想的な雰囲気があります。
ドイツで最も美しいとされているクリプトと呼ばれる地下聖堂は歴代の皇帝たちの墓所をみることができ一見の価値ありです。最後に大聖堂の裏側もぜひ見てみてください。木々の緑に赤い砂岩の外壁が映え、均一な2本の尖塔がどっしりとかまえる姿が何とも美しいです。
大聖堂から2、3分ほど歩いたところに王たちの服飾品があるプファルツ歴史博物館があります。時間に余裕がある人はこちらにも足をのばしてみると各時代の王たちの暮らしぶりを感じることができるかもしれません。